「肝炎ウイルス検査」啓発チラシ(山口大学医学部附属病院作成)の掲載について

C型肝炎(HCV)の治療法として直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral ; DAA)が開発されて以降、その奏効率の高さからHCV感染者数は本邦でも減少していますが、一方で本邦の覚せい剤使用者のHCV抗体陽性率は53.7%に達しており、欧米でも注射薬物使用者 people who inject drugs (PWID)のHCV抗体陽性率は、7.9-82.0%に達するなど、薬物依存患者でのHCV感染の問題が表面化してきています。世界保健機構(WHO)でもHCVの撲滅を目指し、2030年までに2015年と比べて有病率90%、死亡率65%の減少を目標としていますが、薬物依存症患者での感染を抑えない限り撲滅は難しいと考えられます。このためInfectious Diseases Society of America (IDSA)は、すべての人へのHCVのスクリーニングテストを推奨しています。

当学会の研究班において薬物依存症治療医療機関への肝炎ウイルス感染の検査状況についてアンケート調査を行いましたが、入院患者に関しては全例で検査が行われていましたが、外来初診時の実施率は約10%とかなり低い状況であることがわかりました。また、肝炎ウイルスの陽性率も多くの施設で把握されていませんでした。肝炎ウイルス検査に関する啓発パンフレットを作成し配布することで、薬物依存症治療医療機関における適切な肝炎ウイルス検査を普及、促進させ、陽性者が適切な治療を受けるためのウイルス性肝炎治療医療機関との病病連携を推進することが期待できると思われます。

この度、山口大学医学部附属病院 肝疾患センター様のご厚意により、同センターで作成・使用されている患者様向け啓発チラシ「肝がん・肝硬変になる前に!! 肝炎ウイルス検査を受けましょう」を、本学会ホームページに掲載いたしました。本資料は、感染の心当たりを確認するチェックリストや、病気の進行、検査・治療費用の目安などがイラスト付きで分かりやすく解説されています。

パワーポイント版・PDF版の2種類を掲載しており、いずれも連絡先を記入できる仕様となっています。ぜひ、各医療機関・支援機関にてダウンロードの上、チラシの最後の部分に各自治体の肝炎ウイルス検査についての相談窓口やホームページのURLなどをご記載いただいてご活用ください。 

また、令和3年度の国民調査による肝炎ウイルス検査の認識受検率は,B型肝炎ウイルス(HBV)検査17.1%, C型肝炎ウイルス(HCV)検査15.4%と低い値です。受検者の肝炎ウイルス陽性率は、HBVが0.5%、HCVが0.2%と高くはありませんが、未検査の陽性者が一定割合でいることも確かです。薬物依存症治療医療機関以外の一般医療機関におきましても、是非ダウンロードの上ご活用ください。 

注意:ご使用の際は、資料内の copy right 表記を削除せずに ご利用ください。